18. 1万円前後の革靴をどう作るか。縫製現場の意見。

2023.07.10

 

縫製現場でも、OEM生産における悩みがありました。

・ミシンがほんの少し曲がるだけで不良とされる。

・OEM先の修正希望等が原因で、最終仕様の決定が遅れたのに、発売日や納期が決まっているため、その分の生産納期のしわ寄せが縫製場と組み立て場(OEMを受けている会社)にくる。

(OEMは生産納期調整なんて論外。2010年前半当時はそういう横暴な時代です。話し合えばいい、そんなぬるい言葉は通用しません。では他にする、海外にすると言われるだけです)

☆透きや折り込み(靴の履き口をきれいに見せる基本的な縫製作業)の工程が多く、負担が大きい。

・複雑なデザインばかり

・その結果、1足あたりに多くの時間を要するにもかかわらず、工賃は上がりません。

縫製場にも悩みはあります。縫製技術が落ちているわけではありません。正当に時間をかければできる仕事、それは可能です。しかし、どうしても解決が難しかった課題がありました。それが高齢化です。

高齢化と聞くと、現場が無くなってしまう、廃業というイメージが先にありますが、そうではないのです。

高齢化によって衰えるのは「目」です。だから、上記の☆の項目は、特に難しい。目がかすんでしまい、まっすぐ丁寧に、ということが長時間やりづらくなっているとのことでした。

私も49歳です。確かに夕方になると、色々なものがかすむ。

であれば、そうした要因を取り除けばよいと考えました。その他、縫製場と打ち合わせを行い、レシピの量産設計として実施した内容は以下の通りです。縫製場と打合せをし、レシピの量産設計で行ったことは下記です。

  • ミシンが少し曲がっても不良としない。強度に影響するミス以外、見た目などは不問としました。

(最終製品の時によくないと判断したものはアウトレットで販売させていただいています)

  • 透きと折り込みを行わない設計にする。
  • ライニング(裏の材料)を極力減らし、ミシンの工程距離を減らすシンプルな設計
  • つま先と踵に、これまでの常識だと芯を入れるが、その工程を省く
  • 複雑なデザインは避ける
  • 納期の確保。ミシン工程に2か月の時間を確保。(それまでのOEMでは3週間程度と、非常に厳しいものでした。)

結果どうなったか。上記①~⑥それぞれの効果は下記の通りです

  • ストレスが減った。スムーズに仕事ができる
  • 時間短縮が1足あたりの工賃の削減につながる
  • 時間短縮。工賃削減だけでなく、材料代も安価に。さらに革本来の良さが実感できる設計に。
  • 時間短縮。工賃削減だけでなく、とても柔らかい靴に。③と合わせて部品が減ったので軽くなった
  • 時間大幅短縮。工賃削減に。
  • 余裕を持った仕事。

このように、多くのメリットがありました。

何のための仕事かを丁寧に整理したことで、ここまでの良い点が見えてきました。

逆に相手の言い分に振り回され、今まで苦労して取り組んだOEM受注は何だったのか。下請けに圧力をかけるだけのOEMの仕組みは将来確実に崩壊する、そう確信した瞬間でもあり、このような基本的なことに気づけず、行動を起こせなかった結果、会社を窮地に追い込んでしまったことを大きく反省しました。きっかけを作ってくれた『MISSION』という本に大きな影響を受け、深く感謝しています。

もう一つの事実として、高齢化が進むさまざまな現場においても、皆様が確かな技術と意見を持って仕事をされています。高齢化で気力がなくなった、ということはなく、できる仕事、良い仕事を話し合って決めれば、全員が前向きに仕事を継続できる、というものでした。

日本の素材を活かし、日本の現場を活かし、驚くほど柔らかい1万円前後の革靴の量産にも、少しずつ目途が見え、この商品をどのように販売していくのか、へと次の課題に進みます。

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