5. レシピというブランド名にした理由、意味
2023.07.04
Recipe 意味: 調理法 秘訣 秘伝 秘密
柔らかい靴、女性靴 であるから、 優しい響きの言葉がいい。
短い単語がいい。できればカタカナ4文字以内。
英語表記した時に、読みやすい。
主に上記を意識しました。
ブランド名決定の過程ですが、ここから少し長い説明になります。
レシピは2015年7月に最初の1足の出荷を開始しました。
レシピブランドの構想を考え始めたのは、2013年頃になります。
その当時の話であり、私の頭の中で考えていたことです。
当時の弊社は、革靴生産は全てOEM (相手先仕様)の受託生産をしていました。
利益、生産条件など、何もかもが苦しかったです。
「メーカーは言われたものを作っていればよい」とか「部品のレベルを下げてでも安く作ってほしい」など、 寂しい言葉も打合せでは言われましたし、何より、メーカーや靴に最低限のリスペクトを感じない依頼が多かったです。
最低限のリスペクトの無さは「工場に作らせればいい」「サンプル室にものを作らせて」「中国に靴を作らせて」等、「作らせよ」という言葉に表れます。
これは、人の会社と工場とお金を使い、好きなものを作らせているのと同じなのです。
私たちも言われたものを作っているだけとも言えます。作りたい靴が作れていなかったです。自社の得意なことが活かせていない。購入先の圧力で、言っても暖簾に腕押しで、悔しい思いをしていました。
弊社は、2006年頃までは、国産で革靴を作っていて、07年から14年の間は、中国にも自社工場を持ち、生産をしていました。 当時は円高でもあったため、中国でものを作るのが当たり前、国内生産を主にするのは経営としてどうなの?という市況でした。
これは靴業界に限らず、アパレル全般、その他多くの産業でも言える事だと思います。
ある日、12年頃でしょうか、2足の靴が弊社に修理依頼がきました。どちらも中敷修理の依頼品です。 (弊社の靴は、当時、いつ生産したものかが分かるようになっていました。)
修理依頼品①は、2003年生産。その靴の素材は全て日本の材料で作った靴。
修理依頼品②は、2009年生産。その靴のすべては、中国の材料で作った靴。
①は10年近く経過しているのにも関わらず、靴の原型をほぼ保っていました。中敷が加水分解していただけで、状態は良かったです。
②は靴の原型をあまり保てていませんでした。状態は良くなかったです。
その差に衝撃を受けました。
それぞれのお客様が、どれぐらい日々愛用して履いていただいたかはわかりません。
衝撃を受けたのは、日本の素材で作った靴の、コンディションの良さです。
靴の主要部品は、革・中底・底です。 中底とは、中敷の下にある、人間でいうと背骨のような大切な部品です。
革は傷があっても、十分張りがある。中底は、汗や雨水を何年も吸ってきても、しっかり元の形を保っている。 底は減ってしまった分、部分修理はされていたものの、同じく形を保っている。
私自身もこの素材のレベルの差に愕然とし、改めて日本の素材のすばらしさに気が付きました。 極端に言うと、10年間大丈夫な日本素材の靴と、3年でダメになってしまう中国製の靴。 自分の足に合う靴は長く履いていただきたいし、長く愛されたい靴を私たちも作りたい。 長く愛される靴の秘訣は何なのかを、この時考えました。
先にも書きましたが、長持ちする靴の秘訣は、部品の品質レベルであり、 日本の革、中底、底の品質がすばらしかった。 革は革です。中底は、実は紙です。底はゴムです。 革、紙、ゴム の日本の技術レベルは高いです。
調べると、特に紙とゴムは、日本の技術が世界でも最高峰です。
詳しくは別途書きますが、ベネチアングラスの話だけここでは書かせてください。
テレビで見た話です(かなり昔)。イタリア、ベネチアングラスの工房では、出来上がった高級グラスを、日本の新聞紙に包んで保存しているという紹介でした。 わざわざ日本から、新聞紙を輸入して好んで使用されているわけです。グラス職人が、「この紙最高。湿気を吸うし熱にも強い。強度もある。それで安い」と。 日本では新聞紙は、比較的低価格な紙です。
考えてみれば、新聞紙が一度濡れて乾いたあとでも、シワシワだけどちゃんと元の形をしています。 革については、水が大切で、日本の良質な水が、柔らかい革の生産につながっています。 日本に優れた素材があるのだから、革靴の海外生産は一旦やめて、国内で部品を集め、国内で加工し、国内で組み立てる。
2012年の弊社は、海外生産80%、国内20%程でしたが、国内100%に戻していくことを決意しました。
長く愛される靴を作る秘訣は、灯台下暗し、自分たち国内にあったのです。
日本のモノづくりの凄さを改めて知る。大反省。 こんなことを考えて、「秘訣」を英和辞典で調べました。 recipeと記されていました。 イメージにぴったりでしたし、商標登録も可能でしたので、ブランド名はレシピにしました。
靴レシピは「調理法」より、 秘訣・秘密 という意味の方からとっています。
このコラムの題は、「レシピのレシピ」ですから、 靴レシピの秘訣 になります。
余談です、料理の番組で耳にした話です。昔の料理人は、調理法(レシピ)を、簡単に人には教えず、自分の大切な弟子にしか教えなかったそうです。おいしいピザ生地を作るのに最適な時間とか温度とか、作る過程とか、隠し味とか。
考えてみたら当たり前です。秘伝の調理法ですから。
一般的には(調理法)が一番に思いつく レシピという単語ですが、 辞書には、 調理法、秘訣、秘伝 と書いてあるのは、そのような由来があるのかもしれません。
日本には日本のよさ、中国には中国のよさ、その他の国にもそれぞれの良さ、得意分野があります。 モノづくり、モノの量産は、壮大な立体パズルをしているような感覚です。
当時(2013~15年)は、大量生産できる環境とコストの優位性等が備わる、中国+1の地域で量産することが当たり前の時代でしたが、 弊社は、日本の良さに特化した靴づくりをしようと選択し、現在に至ります。
